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プロフィール

ばさら

Author:ばさら
●使用ソフト:Adobe Photoshop7.0・SAI
●タブレット:cintiq.21UX(心の友!!)
●ラクガキ時愛用画材:鉛筆(3HとHB)
●尊敬する絵師様:鳥山明・石ノ森章太郎・手塚治虫・RYOJI・うのまこと・大張正己・金子ひらく

◆生息地:東京の外れ
◆職:エロ漫画描き・専業主婦
◆趣味:妄想・ゲーム・昼寝・のんびり食事・散歩

2014/2/20更新


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表紙1

題名が決定しました。「ラインベルト・ゴールデン・イエロー」って読みます

※カテゴリーを「絵日記」から「自作同人誌」に移動しました


表紙2



フリージアのコピー2フリージアのコピー表紙4表紙3表紙2表紙



2011/4/25追記
SAIの練習がてら、オリジナル娘のラクガキ。
処女。おっとり。黒髪。ツリ目。
18号に激似なのはスルーの方向でっ

1



この話を思いつくキッカケとなった曲







2011/4/28追記
引き続き練習。


パルフェンは成績はあまりいいほうではなかったけど、優しい子でした。
そして密かに恋もしていました。

同じ学校に通う、黒髪の元気な男の子。
双子のお姉さんと一緒に学校に通う彼の後ろ姿を見かけては、
「一緒にお喋りしてみたいなぁ」なんて考えるのです。
恋愛経験が全然ないパルフェンは、影からこっそり見ているだけでもう胸がドキドキなんですね。

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ちょっと見つめすぎたのか。
彼と目があってしまいました。
顔を真赤にしてすぐに目をそらします。
けど、自分に気づいてくれた事が嬉しくてしょうがないパルフェンなのでした。

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女の子の名前が「パルフェン」に決まりました!
恋の成就を祈ってやってくださいませ




2011/4/29追記

パルフェンがあまりにソワソワしてるので、クラスメイトのバイオレットが気になって訪ねます。
「悩み事?」
パルフェンほどではありませんがバイオレットも大人しめで、あまり目立たない女の子。
二人は入学時からの友達でした。
最初は恥ずかしがって隠そうとしていたパルフェンでしたが、そんな彼女に少しずつ話をします。

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「恋してるのね。」

「!!!」

バイオレットのストレートな言葉に顔を真赤にします。
普段は大人しいのに、珍しく動揺するパルフェンを見て、バイオレットは優しく微笑みかけるのでした。





2011/5/6追記


「バイオレットも…好きな人とか…いる?」

「………」

「ぁっ、言いたくなかったら無理にはっ…」


「いるわ… でも諦めてる」

「ぇ…」



「私のは…永遠に叶わない恋だから」



パルフェンはそれ以上聞くことができませんでした。



2011/04/30追記

パルフェンの頭の中は彼の事でいっぱい。
眠れない夜もありました。

そんなパルフェンを心配してか、ある日バイオレットが放課後の屋上に呼び出しました。


空がオレンジから紫に変わる夕暮れの中、バイオレットは小さな声で一度だけ言いました。

「…この香水を使ってみなさい。」

綺麗なガラスのビンに、パルフェンは目を奪われました。
中には真紅の液体が入っていて、不思議な光を放っています。

「これは…?」
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「効き目は折り紙つき。相手に少しでもその気があれば・・・ね。」




2011/5/1追記

バイオレットの話によればこの香水を好きな相手に彼に使い続けると、たちまち恋に落ちてしまうのだそうです。
なんて素敵な薬だろうと、パルフェンは思いました。

ただ、どうやって彼に使えばいいのでしょう?

実際に喋った事すらないのです。
名前も知らない関係なのに、急に香水をふりかけたりなどしたら、絶対に嫌われてしまう。
パルフェンは段々心配になってきました。

慌てるパルフェンに、バイオレットは優しく言います。


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「自分の首筋に一吹きして、毎日彼とすれ違いなさい。」
「え…すれ違うだけで…いいの?」
「ええ。すれ違うだけ。」
「そ…それくらいならできるかも。」

「頑張って。パルフェン。」


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次の日。放課後の通学路。
パルフェンはバイオレットに言われた通りに、勇気を振り絞ってできるだけ彼のすぐ傍をすれ違いました。


彼が…私のことを、好きになってくれますように…




次の日も、また次の日も、そのまた次の日も、
パルフェンは彼とすれ違いました。





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ある日の彼の家。

姉と親戚の女の子に囲まれながら、赤くなる彼の姿がありました。

「お兄ちゃん、最近楽しそうだね。何かいいことでもあったのぉ?」

「別に何もねえよ。」

「あ~~~♪好きな人でもできたんじゃないの?」

「ちげぇよ!」

「あはは♪顔が赤くなったっ。絶対いるんだ~!」

二人を見つめながら楽しそうに笑う姉。




薬は確かに効いていました。


パルフェンの事など全く知らなかった彼。
そんな彼が、少しずつ…彼自身も気づかない内に、パルフェンの事を好きになっていたのです。

毎日、学校の傍ですれ違うだけの関係。
名前も知らないその女の子に、彼は恋をするようになりました。


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2011/5/2追記

一方のパルフェンは、実際に薬の効き目を確認する手段もなく、不安や焦りが生まれ始めていました。
ですが、バイオレットの言ったことを信じて毎日彼と道ですれ違っていました。
赤い薬も残り少なくなってきたし、新しいものを貰おう…そんな事を思っていた矢先。


昨日まで一緒だったバイオレットが、突然煙のように消えてしまったのです。


転校したのであれば手紙や電話くらい、いくらでもできそうなものですが、そうではありませんでした。
友達や学校の先生に聞いても、みんな口を揃えて不思議なことを言うのです。


「バイオレット…?…そんな子いた?」

自分以外の全員が、バイオレットの存在自体を忘れ去っている。

パルフェンは生まれて初めて仮病で学校を休み、必死でバイオレットを探しました。
今見つけないともう二度と会えない。そんな気すらしました。
でもその努力も虚しく、ついにバイオレットは見つかりませんでした。


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大切な友達を失い、パルフェンは途方に暮れていました。



2011/5/4追記



パルフェンは残り僅かになった薬を首筋に塗り、いつも彼とすれ違っている並木道の影で、こっそり隠れていました。

でもあまり元気がありません。
それもそのはず。バイオレットの事がいつも頭の片隅にあるのですから。

元気にしてるかな…。
突然、私に会いに来てくれたりしないかな…。


そこに彼がやってきました。
彼の顔を見ると、少しだけ元気が出てきます。
できるだけ目を合わせないように…そっと歩道へ足を踏み出すパルフェン。

薬を使い始めた頃はかなり挙動不審でしたが、何度もすれ違う内に割と落ち着いた素振りができるようになりました。

今日も絶対に大丈夫。
すれ違ってそれで一件落着。
明日もまた同じ場所ですれ違う。
ただそれだけ。
何も怖いことなんてない。


でもその日はいつもとは少し違ったことが起きてしまいました。
余りにも突然な事でした。


「あの…!」

彼がパルフェンを呼び止めたのです。




「ぇ…」

一瞬、空耳かと思いましたが呼び止めたのは確かに彼の声です。
パルフェンはその場で固まってしまいました。

いつも通り、ただすれ違えばいい
その言葉が頭の中をグルグルと回ります。

そうだった…いつも通りすれ違うだけでいいのよ…
そう自分に言い聞かせ、彼の声を無視してそのまま足を進めるパルフェン。



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その時。
パルフェンの小さな手を、彼の手が引き止めたのです。


ますます声がでなくなります。
振り返ることなど絶対にできませんでした。
彼と話してみたい。
ずっとそう思ってきました。
でも、いきなり手をつながれる…そんな展開は誰も想像していませんでした。

…こんな時どうしたらいいの?…バイオレット…助けてっ…

顔を真赤にしながら心の中でバイオレットの名前を何度も何度も呼びました。


彼も何か喋っているようでしたが、混乱状態のパルフェンの耳には一切届きません。

「ご…ごめんなさぃっ!」

緊張のあまり、ついにパルフェンは彼の手を振りほどき、一目散に逃げ出してしまいました。







2011/5/5追記

彼は落ち込んでいました。
勇気を出して声をかけてみたものの、好きな女の子に逃げるように走り去られたられてしまったのですから。

ちょっと強引すぎた…かな

いつもと明らかに違う表情をしている彼に気づいたのは親戚の女の子。

「お兄ちゃん、浮かない顔してどうしたの?なにか嫌なことでもあったのぉ?ふふ♪」

「なんでもねぇよ」

「あはっ。そういう時はパーっと買い物でもしに行こうよ。」

「…はは、そうだな…。行くか。」

「そうこなくっちゃっ。今日はバイトも無いからいっぱい時間あるんだ、私。あ!そうそうっ、欲しい服があるんだけどさぁ♪…」




一方、パルフェンも彼と同じくらい落ち込んでいました。
せっかく彼の方から声をかけてくれたのに、自分でチャンスを棒に振ってしまったのです。
それどころか、あんな態度を取ってしまったのですから、嫌われてしまってもおかしくはありません。
パルフェンは、今すぐにでも彼に謝りたい気持ちになりました。

「今度彼に会ったら…勇気を出して私から声をかけなくちゃ…」





2011/5/6追記




誰のせいでもない。

それは交通事故のようなものでした。


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彼と知らない女性が寄り添って歩いている所を見てしまったのです

毎日彼の傍をすれ違ってきましたが、自分が踏み込んだ事の無い「場所」にその女性はいる

離れていく二人の背中を見ていると、彼が自分とは全く関係のない世界に行ってしまうような…
…そんな気がしました


幸せになって欲しい…


「嘘」が頭の中を虫のように這い回る

そんな自分を押し殺すように強く瞼を閉じます

溢れる涙の熱さは、かつて自分の流してきたそれとは全く違うものでした



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その様子を電信柱の影から見守る一人の老人がいます。


「お嬢さん」

「………」

「お嬢さん」

「…ぁ…あなたは?」

やっと老人の存在に気づき、慌てて涙を拭います


老人は優しく言いました
「何も言わなくていい。キミの気持ちはワシにも痛いほど分かる…。ついてきなさい。」


パルフェンは今までの人生の中で、知らない人について行くなんて事は一度もしない、とても真面目な女の子でした。

ただ…この日だけは違いました

まるで催眠術にでもかけられたかのように、見ず知らずの老人の後をついて行ってしまったのです…




2011/5/9追記

老人に導かれるままに、パルフェンは歩きました。
彼の事を思い出しては涙で視界がぼんやりして、どこをどう歩いてきたのか思い出せません。

しばらくして、大きなお屋敷の前にたどり着きました。
屋根の作りは、どこか宮殿のようにも見えます。


「さ…こちらへ。階段に気をつけて…」

優しく笑みを浮かべながら老人が手を引きます。

階段を上りきった先には沢山の宝石や彫刻の施された大きな扉がありました。


「…………きれい…」


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中にはいると、そこは寝室でした。
こんなに綺麗なシャンデリアを、直に見るのは生まれて始めてでした。
屋根の付いた豪華なベッドも、映画や本の中でしか見たことがありません。

出会う物すべての美しさにパルフェンは目を奪われ、まるでどこか遠くの国のお姫様になったような…とても不思議な気持ちになりました。



その様子を見ながら、老人はゆっくりと口を開きます。

「さぁ…時を忘れ、ここで思う存分楽しんでいきなさい…」



突然老人は、床に何かを置きました。

ドサっ…!

重い音が部屋に響きます。


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「ぇ………」



足元に、「重い音」の正体が不気味に横たわっていました。

下着一枚だけを身につけた大きな人形…

どことなく彼に似ているその人形を見て、パルフェンは言葉を失いました




2011/5/11追記


パルフェンは不気味なオーラを放つ人形を目の前に不信げな表情を浮かべます…


「だまされたと思って、人形のそばに寄ってみなさい」

たじろぐパルフェンの背中に手を添え優しく導く老人…

怯えながらも、人形との距離が一歩…また一歩…
少しづつ近づきます…


近づいて近づいて、ついに目と鼻の先の距離まで近づいた時です…

「ぇっ………」



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急に視界が明るくなり…目の前に大好きな彼がいたのです。

なぜ彼が…

しかもこんなに傍に…

あまりに突然な出来事だったので、パルフェンは軽いパニック状態になりました。

今度こそ自分から話しかけると決めていたのに、目を見ることすらできません。


「落ち着いて…。ゆっくり話しかけてごらんなさい…」


老人に後押しされ、…パルフェンは決心しました。


一度だけ目を強く閉じ…

彼の目を見て、そっと…口を開きます。


「ぁ…あの」

「…………」

「…ぁ…ぁ…ぁの」

「…………」





「そばに…いても……いいですか…」





2011/5/14追記

勇気を出して彼に言葉を投げかけても、何も返事はありません

返ってくるのは、全てを包みこんでくれるような優しい微笑みだけ



パルフェンは、それで十分でした


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なんて素敵な人なんだろう…

この人を好きになれて本当に良かった…

パルフェンは彼に話しかけるのをやめて、目を閉じ…そして…

今のこの時間を、ただただ幸せに思いました



「この時が永遠に続けばいいのに…」



ふと…あたり一面に心地のよい香りが広がっていました
それはどこかで嗅いだことのある香り…むしろ、とても馴染みのある香りだったかもしれません



パルフェンはいつの間にか、深い眠りについていました






2011/5/17追記

次の日、パルフェンは自分の部屋で目覚めました

隣を見ても彼の姿はどこにもありません
あの夢のような世界は見る影もなく、いつもの見慣れた光景が広がっています

あれは全て夢だったのかしら…


その日は休日。
パルフェンは朝御飯を食べる時も、英語の宿題をする時も、お昼寝をする前も、ずっと彼のことばかりを考えていました。



もう一度彼に会いたい…





彼の傍にいたい…



パルフェンは、思い立ったように化粧台の引き出しを開き、残り僅かになった香水を取り出しました

そっと蓋を開き、顔を寄せ…その心地良い香りを楽しみます

草原の蕾が一斉に咲いたように、昨日の出来事が頭の中に広がりました。

思ったとおり…。

昨日あの部屋で嗅いだ香りは、この匂いと全く同じだったのです。


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彼に会いたい……



彼に会いたい……





すると突然、パルフェンは思い出したようにゆっくりと歩き出したのです

まるで誰かに操られているかのようにも見えました

家を出て…学校に行く途中にある小さな教会の角を曲がり…そして橋を渡り…

どこまでが自分の真実の記憶なのか、はっきりとは覚えていません


優しく包みこむような雲の中を歩き続けると、どこか見覚えのある大きな扉が口を開けて待っています。



気がつくと…
パルフェンはいつの間にか、昨日の黄金の部屋の片隅に立っていました。





2011/5/20追記


あの香りが私をこの部屋に導いてくれた

彼の元へ導いてくれた

パルフェンは少しも不思議に思いませんでした



あの香りを嗅げば、いつでもここに来られる…


その部屋は、香水の香りで常に満たされているせいか、足を踏み込んだパルフェンは、もう彼が「人形である」という事を忘れてしまっているようでした

パルフェンは夢中でした。


放課後になっても、「本当の彼」に会いに行くことを忘れ…

「人形の彼」に会いに行くようになったのです




一緒にお昼寝をした時、ふと目が覚めると彼の顔がすぐ傍にあって、心臓が止まりそうになった事もありました

恥ずかしがりながらも、すごく嬉しそうなパルフェン

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二人でいると、楽しい事がどんどん湧いてきて、笑顔で部屋中が満たされるのです


パルフェンはあまり人と話すのが得意ではなかった方ですが、彼だけには少しずつ自分の事を話すようになりました…


家でクッキーを焼いた話。

得意な科目の話。

バイオレットの話もしました。

彼は黙っていながらも、すべてを聞いてくれているように感じたのです



パルフェンは心の底から幸せでした


時計を見ると22時を過ぎています
パルフェンは眠くなってきました
それもその筈。いつもならもうベッドに入っている時間なのです
彼に見られないよう、恥ずかしそうに両手で欠伸を隠します



「…今日もとっても楽しかったです」

「…………」


「…ぁ…明日も来ますね…」

「…………」



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パルフェンは彼の顔を見て…微笑みながら涙を流しました

こうして毎日彼に会いにきても、次の日にはまた自分の部屋で目が覚める

この部屋でいくら幸せになれても、一人で目覚める朝の切なさからはどうやっても逃げられないのです


眠りたくない…

ずっとこうしていたい…

朝なんて来なければいいのに…







2011/5/27追記


学校の放課後、彼は一人帰り路を歩いていました

チラチラとあたりを見回し…何やら誰かを探しているようです

空を仰ぎ、ため息を一つ

彼は、名前も知らない女の子の事を思い出していました


「突然すぎたよな…嫌われるのも無理ないか…」


彼女の手を握ったあの日以来、彼女とは一度も会えていません

遊んで気を紛らわせようとしても、逆に忘れようとしても、彼女の事が頭の中を回ります



そのもどかしさが、彼の恋心に拍車をかけているようでもありました






2011/5/28追記





通学路を歩くパルフェン



早く彼に会いたい…

学校が終わったらすぐに会いに行こう…

今日もいっぱいお話ししたいな…



パルフェンの頭の中は前にも増して彼の事で満たされていました

彼の笑顔を思い出すと、自然と笑顔になれるのです

心の底から幸せで…でも少しだけ切なくて…

その不思議な感情につられて涙が出てきました

通学路の真ん中でハンカチを出し、パルフェンは涙を拭きます



ふと顔をあげると、学校に向かう彼の姿がありました

彼もこちらに気づいていましたが、なぜだか少し困惑した表情をしています





パルフェンは嬉しくなりました

放課後のあの部屋でしか会えない筈だったのに、こんなに早い時間に会えたのですから

挨拶も自然なものでした



「…おはよう…」



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「えっ…お…おはよう」

突然声をかけられて、慌てて返事をする彼



「今日も…会いにいきますね」

「………ぇ?」


他の人の視線を気にしてか、パルフェンは彼にもう一度だけ笑顔を送り、恥ずかしそうに学校へと走り去っていくのでした






2011/5/29追記




あんなフラれ方をして…久しぶりに会えたと思えば、彼女の方から挨拶をしれくれた

願ってもない事が現実となり、部屋の天井を見つめながら嬉しくなる彼

「…もっとマシな返事できただろうが俺。ははは…。」

天井にボンヤリと映る彼女の幻影を見ながら、不器用な返事しかできなかった自分を恥じる

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「今日も………会いに行きますね……」


…どこで会うつもりだったんだろう…

…会いたかったな…


唯一、その言葉だけが頭に引っかかり、彼はその夜なかなか眠りにつけませんでした





2011/5/31追記



このままなにもしなかったら、またチャンスを逃してしまう…!




前日、殆ど眠れなかった彼は通学路で彼女を待ち伏せしていました

昨日できたんだ。今日挨拶しても、誰も怒らないだろう。


…挨拶まではできる

ただ、その後の事が纏まらず何度も何度も考えこんでしまいます


一緒に学校まで歩いて…

その時何を話せばいいんだろう?


彼女の趣味ってなんだ? 

どんな話なら楽しんでくれるだろう?

そもそも、彼女の名前すら知らないときてる

向こうは自分の名前を知ってるのか?


昨日からそんな事ばかり考えながら、半ばパニック状態で無理矢理でも頭の中で話題を作ります

嫌われないような話題を構成しようとすればするほど、予め頭の中で用意していた話題がどんどん少なくなっていきます

まだ何もしていないというのに、彼の額は少し汗ばんでいるようでした

そんな彼の後ろ姿に突然声がかかります


「おはよう…」



「ぇっ…」


彼女が現れたのです



濁りのない笑顔を向けられて、彼は用意していた全ての言葉を失ってしまいました

不器用な自分の全てを許してくれるような…彼女の優しい微笑みに、彼は黙りこんでしまいます


混乱状態で少し汗ばみ、耳まで赤くなっている彼を見て、パルフェンは少し笑います


「ふふ…」

「…は…ははは…」



二人とも少し顔を赤くしたまま、会った場所から学校の校門までのわずか100メートル弱

気の利いた会話ややり取りをするというわけではないのに、二人の間に気持ちのいい空気が流れているようでした


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彼女が彼の目を見る…彼も視線を合わせる

そして恥ずかしそうに二人とも視線を外します

すると今度は、彼が彼女の目を見て…彼女も視線を合わせる

また視線を外す



そうして、何も話さないまま二人は学校の校門へとたどり着きました


「また…ね…」

「ぁっ…ああ。また…。」




彼女の背中を見送り、さっきまですぐ傍で見ていた彼女の横顔や笑顔を思い出します

彼は、この気持ちが「恋」というありふれた言葉で済まされてしまうような、そんな簡単な感情だとは思いたく無いほどに…


パルフェンに強く恋をしていました





2011/6/4追記


黄金の部屋で仲良く二人は寄り添っていました



「…朝…楽しかったです」

「…………」


「とっても………」

「…………」



微笑む彼に安心して、パルフェンは話を続けます


「…本当は。挨拶するのも恥ずかしかったん…ですよ?」

「歩いてる時も、人目とか気になっちゃって…その……」

「…いつもみたいに、あんまりお話しとか…できなかったですけど…」

「………楽しかったです……」






その時、重い扉を誰かがノックしました

「お嬢さん。ちょっとだけ時間をもらえるかな?」


パルフェンはそれがおじいさんの声だという事に直ぐに気づきました

「ぁ…ちょっとだけ待っていてくださいね…」

彼に一言告げて、扉の外に出ます。


「久しぶりじゃの。お嬢さん。」


優しい笑顔を浮かべるおじいさんに、パルフェンは慌ててお辞儀をします。
パルフェンは、こんなに素敵な部屋を紹介してくれたおじいさんに、まだ何のお礼も出来ていない事を以前から気にかけていました

「ぉ…お久しぶりですっ」

「久しぶりだね。楽しそうにやってるようで何よりだよ。うむうむ。」

「…あの、あの日からお礼も何も言えなくて…その…、おじいさんに何かお礼ができればって、ずっと思っていたんです…」

「いいんじゃよ。あなたが楽しんでくれれば、ワシはそれで十分なんじゃ。」

「でも……」

「いいんじゃいいんじゃ。これからも、この部屋を存分に楽しんでいってくだされ。」

「…ありがとうございます」



見ず知らずの私なんかに、なぜこんなにもよくしてくれるのだろう…

パルフェンは時々、こんなに幸せな場所を提供してくれたおじいさんを思い出しては、不思議に思うことがありました

でも、久しぶりに会ったおじいさんの純粋な笑顔を見て、少しだけですが何か分かったような気がしました




…この世には見返りを欲しない真の善意を持つ人がいる…

…シンデレラにガラスの靴と馬車を与えた魔法使いのような、無償の愛を持つ人が…




目の前のおじいさんを見つめて、パルフェンはまた涙を浮かべました


「おやおや。泣かないでおくれ、お嬢さん。」

おじいさんはポケットから綺麗なハンカチを取り出し、パルフェンに渡します
でもそのハンカチの暖かさに、前にも増して涙が溢れるのです


涙目のまま、パルフェンは突然口を開きました

「おじいさん…クッキー…お好きですか?」

「?」

「私…まだあんまり上手くないんですけど、お菓子を作るのが好きで…」

「ほぉ…?」

「クッキーは、自分が作れるお菓子の中でも、ちょっとだけ自信があるので…もしよろしければ、おじいさんに作ってさしあげたいんです。」

「ワシに?ぉぉ。それは嬉しいのぉ。」

「はぃ。」


おじいさんの笑顔につられるように、パルフェンも微笑みました
するとおじいさんは視線を反らし、扉の方を見つめました。


「じゃがのぉ…」

「…はぃ?」


「ワシなんかより、もっと食べさせてあげたい相手がいるんじゃないのかい?」

「ぇ……」


「彼じゃよ。好きなんじゃろ?」

「…ぇっ……ぁ…」


「ほっほっほ。今更隠さんでもいいじゃろうて。」

「ぁ……そう…ですね。」


パルフェンは、初めてこの部屋に連れてきてもらった日の事を思い出しました
おじいさんの応援があったからこそ、今のこの幸せがあるのです…


「でも…彼、喜んでくれるか…ちょっと不安で…」

「喜んでくれるとも。一生懸命作れば、気持ちは伝わるもんじゃよ…」


パルフェンはその言語に勇気をもらいました

彼が私のクッキーを食べ、喜んでくれる。
考えるだけで嬉しくなります。

「分かりましたっ。じゃあ、今度いっぱい焼いて持ってきますね…っ」

「ほっほっほ。そのいきじゃ。ワシも楽しみにしておるよ。」



「そうじゃ、いいものをあげよう…」


おじいさんは赤いリボンの巻かれた綺麗な小瓶を取り出しました

中には真紅の液体が入っています

パルフェンは見覚えのあるその紅い輝きに目を奪われました

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小瓶の蓋を開くおじいさん。

ゆらり…ゆらりと、香りが中から広がりだしてくるのが、鮮明に見えるようでした。

無意識の内に「真紅の香り」に顔を寄せるパルフェン…



おじいさんは優しい笑顔のまま言葉を続けました

「クッキーの材料に混ぜてみなされ。なぁに、隠し味みたいなものじゃ………ほっほっほ…」





香りに誘われ、パルフェンはいつの間にか眠りについていました。






2011/6/9追記





目が覚めるといつものように、そこは自分の部屋。

右手には、おじいさんから貰った綺麗な小瓶が握られています



そうだ
クッキーを焼かなくちゃ




朝日に照らされる小瓶を見つめ、パルフェンは体を起こしました

すぐに顔を洗い、さっそく買い物にでかけます

近くのマーケットに行き、牛乳や卵、薄力粉をカゴに入れます

つまらない買い間違いをしたりしないように、いつもより少し慎重に

彼とおじいさんの為にに、綺麗なプレゼント用の空箱も二つ選びました

買い物をしている間、パルフェンはずっと嬉しそうな表情をしていました



今までのお菓子を作りはただの趣味

でも今回は、大好きな人と、大切な人に食べてもらう為に作るのです

いつかそんな日が来る事を仄かに夢見ていたパルフェンは、それが嬉しくて嬉しくて仕方ありませんでした



家に帰ると、さっそくクッキー作りに取り掛かります

0603のコピー


パルフェンは自分のレパートリーの中でも、クッキー作りに一番の自信を持っていました
お母さんに教わりながら、初めて作ったお菓子もクッキーでした


何度も作ってきたんだもの。今日も落ち着いてやればきっと大丈夫…

自分にそう言い聞かせます


でも喜んでくれるかな…

もし、「美味しくない」なんて言われたら…



時々悪い考えが頭を過ぎります

ちょっと気を抜いたら思わぬミスをしてしまうかもしれない…

パルフェンは、キュっと唇を噛み締め、自分に気合を入れるのでした






生地を練り終わる頃、キッチンの片隅に置いてある紅いリボンの小瓶と視線が合いました


「確か、隠し味だっておじいさんが言ってたわよね…」


吸い込まれるようにその小瓶を手に取り、蓋を開けるパルフェン

包みこむような深い香りが鼻の奥をつつきます


「やっぱり…この香り」


それは幾度と無く嗅いできた香りでした

ふと、バイオレットの事が頭をよぎります

小瓶に導かれるようにパルフェンは、生地に紅い液体を流しこみました


0606のコピー



ほんのり黄色かかったクッキーの生地がピンク色に代わり…



すると一瞬
…ほんの一瞬だけ

生地が「黄金」に光り輝いたのです

全てを黄金に染めるかのような、目がくらむ強烈な光り


0606-2のコピー



その光りは、パルフェンが毎日通っていた「黄金の部屋」の輝きとよく似ていました






2011/6/15追記


オーブンの隙間から部屋一面にクッキーの香りが広がります

美味しく焼きあがった合図です

パルフェンはニッコリしながら手袋を付け、熱いオーブンからクッキーを取り出しました

「いい匂い…」

こんがりキツネ色のできたてのクッキーを一つ、そっと手に取り「味見」をしてみました




味見は、お菓子づくりをする上では欠かせません
今回もいつもと同じ、「ただの味見」で何事もなく終わる筈でした


0609.jpg





サクっ






風景が一瞬にして消え去り…真っ白な空間に放り出されるパルフェン




「ぇ……」




パルフェンは驚いて辺りを見回します…

永遠に広がっているかのような白の世界…

助けを呼ぼうと声をあげようとした瞬間…




あたり一面に、一斉に黄金の花が咲きはじめました

パルフェンの瞳に、キラキラと輝く無数の黄金の花が写りこみます

見上げると、永遠に続く白を「青」く染めながら、突き抜けるような空が現れ

燦燦と輝く太陽がどこからともなく降り注いでいます

絵に描いたような大きな入道雲

心地の良い香りが鼻から首、胸から足まで通り抜け

パルフェンの体すべてを溶かしていくようでした


そして黄金の花畑の遙か向こう…

…ほんの一瞬だけですが、パルフェンの目には確かに見えました


優しく微笑む彼の姿が







どれくらいの時間が過ぎたのでしょう…


太陽がオレンジ色に変わるのを見ることもなく、いつの間にか窓の外はもうすっかり夜。

意識を取り戻したパルフェンは、明かりのない真っ暗なキッチンに一人立ち尽くしていました
時計を見ると夜の10時

「ぇっ…もうこんな時間っ」

パルフェンはクッキーを箱につめ、急いで彼の部屋へ向かう支度をはじめました







2011/6/20追記



クッキーもしっかりプレゼントの箱に入れ、いよいよ出かける準備が整いました



今日は彼に会いに行くだけにして、クッキーを渡すのは今度にしようかな…



玄関で靴を履いている間、時折不安が頭をよぎります





パルフェンは天井を見上げ…一度だけ大きく深呼吸をしました

そして、最初にバイオレットに貰った小瓶と視線を合わせます



バイオレット…

ほんの少しだけ…

勇気を貸して…




蓋を開けた香水の瓶の淵に、そっと鼻を寄せ

深く…深くその真紅の香りを吸い込みます



深く…

深く…




「一生懸命作れば、気持ちは伝わるもんじゃよ…」


おじいさんの優しい囁きを思い出します




きっと大丈夫…

きっと…





まどろみの中パルフェンは、そっと家を後にしました






誰もいなくなった玄関の片隅

暗闇の中、月の光に照らされ、その小瓶はただただ光を放っています





それは残酷とも言えるほどに…無機質な輝きでした











2011/6/23追記









「あのっ…」






意識のないパルフェンに突然、声がかかります



もう…あの部屋に着いたのかしら






ゆっくりと目を開くパルフェン



そこは夜の街のど真ん中

顔を上げると、目の前に彼の姿がありました





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「ぇ…」



どうしてこんな街中で?

今までこんなことは一度もありませんでした



彼を目の前にして、急に鼓動が早くなります

毎日会っていた筈なのに

手できつく握り締められた紙袋が、パルフェンを焦らせるのです




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「あの…」

「は…っはぃっ…」



「…近くのバーで俺の親戚がアルバイトしてるんだ」

「ぁ………そうなんですね…」


「よかったら…その…」

「………」


もじもじする彼の傍に、パルフェンは吸い込まれるように歩み寄り…

そして、透き通った眼差しで言いました







「…連れていって欲しい…です」




「…うんっ…」


その優しい眼差しに、彼は嬉しそうに微笑みました










2011/6/24追記



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カランカラン…


バーの入り口のドアに吊るされた、小さなベルが鳴り響きます


「こんばんはーっ」




静まり返った店内に彼は不思議な顔をします

いつもならマスターと、親戚の女の子が顔を覗かせる筈なのですが


店の奥を覗くような仕草をして、もう一度だけ声をかけます







「こんばんはーっ…」






その間、パルフェンはずっと、彼の背中を見つめていました







一生懸命焼いたクッキー…

喜んでくれるかな…








ガタ…


カウンターの下から、一人の老人が申し訳なさそうに顔をのぞかせました


「ほっほっほ…返事をせんですまんかったの。ちと捜し物をしておってな…」






彼は初めて会うその老人に少し戸惑っている様子でした

「ぇと…あなたは…?今日、マスターとあいつは休みでしたっけ?」






老人は笑顔で答えます

「ああ。二人は急用でな…。今日はワシ一人で店を引き受けてるんじゃよ。」


「急用?……珍しいなぁ…。」


「ほっほっほ。」







聞き覚えのある笑い声でした…

もしかして…





パルフェンは顔を上げ…

そして、カウンターの裏から現れたその老人を見て驚きました

その老人は黄金の部屋を紹介してくれた、あの優しいおじいさんだったのです




見慣れない店の中で彼と二人きりで、カチカチに緊張しきっていたパルフェンも、

おじいさんに出会えた事で安心した表情になりました






「ささ…っ。立ったままでいるのもなんじゃろ。どこでも好きに座りなされ」





カウンターごしにおじいさんの前を横切ります

パルフェンは、嬉しそうにおじいさんに微笑みかけ、小さくお辞儀をし…

彼にバレないように、こっそりとおじいさんにプレゼントを渡しました

おじいさんは声に出さずに「ありがとう」と微笑みを返します





その笑顔で、パルフェンの不安は少しだけ収まったようでした

カウンターからおじいさんが見守っていてくれる…

いつ、どんな時でも常に味方でいてくれているおじいさんの事が、頼もしくもありました







店の奥にある二人用のテーブル





「この席…俺のお気に入りなんだ…」

そう恥ずかしそうに言いながら、イスをひく彼

「ぁ…ありがとう」






自分のすぐ傍に彼が立っている

パルフェンは恥ずかしくて、急いで席に着きました





彼も正面の席に座り…

向い合ったまま微笑みを送ってくれました





パルフェンは一つだけ深呼吸をして…

いつものように、ゆっくりと彼に話しかけました



「あの…」


「はぃっ…」




「あなたの為に…クッキーを焼いてきたんです…」



「ぇ…俺のために…?」





彼は驚きの余り、口が開いたままになっているようでした

ですが、パルフェンの方も紙袋からプレゼント箱を出すのに精一杯で、

彼の様子には気づいていません






ピンクのリボンで彩られた、可愛らしいプレゼント箱が机の上に置かれます






「これ………よかったら…」






パルフェンは耳まで真っ赤になっていました





「ぇ…と…」






彼は余りにも突然の事で動揺していました

少しだけでもいいから話しができれば…

そう思っていた所に、まさかのサプライズプレゼントを出されたのですから






その時、カウンターごしにおじいさんが控え目な声で言いました

「ほっほっほ。あんたの為に彼女が一生懸命焼いてくれたんじゃぞ…?
 理由など考えず、ここは素直に受け取るのがマナーじゃろう。」






その間パルフェンは俯いたまま、ギュっと目を閉じていました





ドクン…ドクン…ドクン…ドクン…ドクン…ドクン…





彼に聞こえてしまうんじゃないかと思うくらいに心臓が激しく高鳴ります

パルフェンは両手を胸に当て、精一杯の力で鼓動を「隠し」続けました





時が止まっているようでした






その時…







サクっ




「おいしいっ…」





「ぇ…」









「クッキー…とっても美味しいよっ」









「ぁ……ぁ………」





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その言葉で胸の苦しさが全て吹き飛ぶのが分かります…

パルフェンは涙を零しながら、震える唇でしっかりと伝えようとしました

「ぅっ…ぁ…」





ゆっくりと顔を上げ…



「ぁ……ぁり…」





そして彼の目を見て…


「ぁ…りが………」











「ありがとう」



被さるように、優しい彼の声が耳に響き渡り






パルフェンにとって、永遠に忘れる事の無い彼の笑顔が



永遠の「白」に包まれていきました




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もしあなたが「それ」を望むのならば



二人の目の前に、真っ青な空が広がり

あの美しい黄金の花畑が現れる事でしょう




うっとりするような香りの中で目が覚めた二人は…やがて見つめあい

あの二人のことですから、「おはよう」とか「こんにちは」とか…挨拶するのです




改めてクッキーのお礼をする彼…

その後で、今までずっとできなかった自己紹介をしたり…

恥ずかしがりながらも、少しずつお互いの趣味の話しをしてみたり…



仲良くなれば、一緒にお散歩をしたりもするでしょう…

二人だけの幸せな時間を刻んでいくのです





「永遠」の中で

いつまでも






…もしあなたが「それ」を望むのならば。





              ………おわり………
















2011/6/25追記







ただ闇が広がっていました




暗い実験室のような場所…

沢山の機械音が小刻みに鳴り響く闇の中、一つの明かりが灯されました

紅いリボンの形をしたライトがぼんやりと部屋を照らし、真紅に染め上げます

その中心に、白衣を着たおじいさんの姿がありました





ガチャ



「遅くなりました…ドクターゲロ様」





実験室の扉が開き、黒いスーツを着た数人の男が入ってきました


その中の一人の腕に、気を失った少女が抱かれています


パルフェンでした


実験台の上にゆっくりと下ろされるパルフェン



「待っていたぞ。くっく…綺麗な寝顔だ」




「…もう全て済ませたんだな?」

「はい。」





「誰にも気づかれていないだろうな。」


「はい。そちらのほうも念入りに…。」


眠った少女を跨いで淡々と継続する会話…



「ご苦労だったな」


「それでは私達は失礼致します。」



深々とお辞儀をする男達

与えられた仕事をこなすと、静かに扉に振り返りその部屋を出ようとします

すると、おじいさんの影がゆっくりと動き…







ドン!






扉を出ようとした男たちの中の一人が、突然音を立てて地面に崩れ去りました…





おじいさんは右手に握られた拳銃を見つめながら、残された男達に訪ねました

「して…その汚い手で私の大事な素材に触ったのは……その男だけか…?」





ただの肉塊となった「それ」の周りに鮮烈な赤い血溜まりがゆっくりと広がっていきました










2011/7/1追記


紫の髪を揺らし、暗い廊下を行く少女の後ろ姿

バイオレットです


向こうからはおじいさんが歩いてきました



「くっく。珍しい来客だな…」

「………」



「ようこそ…我がアトリエへ…」



おじいさんは両手を広げて、バイオレットにニッコリと微笑みます



そんなおじいさんを、バイオレットは冷たい目で見つめていました



「全て終わったの?……あの実験は…。」


「ああ、お陰様でな。そうだ、礼がまだだったな。」



…おじいさんのお礼には、どこか皮肉がこもっているようでした


「お前の体の調子はどうだ?
 人造人間の体もなかなか良いものだろう。」

「そうね…。悪くは無いわ」


バイオレットの細い体を舐めるように見つめるゲロ

「それは良かった。くっく…たまに思い出すものだ。改造中のお前の眠り顔を…」




「………
 それで…パルフェンの人造人間化計画が行われるのは、いつからなの」

「心配せんでもすぐに取り掛かるつもりじゃよ。
 新鮮な素材は新鮮な内に調理しないといけんからの。」


「素材…。「仲間」の間違いでしょ?…」

「仲間?…くくっ…ぶわっはははっ。
仲間か…そうだったな」


「………」


「安心しろ。あの娘もお前のように立派な人造人間にするつもりだ。」




「…そう。よかった。」


その答えに、少し安心したような顔をするバイオレット


「こうして着実に団員を増やしていけば…我々レッドリボン軍の真の目的が果たされる日も、そう遠くはないのかもしれないわね…。」


「くっくっ…。「真の目的」というと聞こえはいいが
 言ってしまえば時代遅れの世界征服とやらだろう…」





「征服ではない。我々の目的は統治する事にある
 ドクターゲロ。今日私がここに派遣されたのは他でもない。
 人造人間16号、17号、18号の製造を再開するようにと、上からの命令よ。」


「上?
 ああ。ブラック補佐の事か
 ヤツは元気にやっているか?」


「…ブラック「総帥」よ」






「ああ、そうだった…
 主殺しのブラック…」





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◆常連様オススメ◆
2023/3/10更新
管理人の好みで色々と掲載してみました~




◆鳥山センセ系◆
2013/9/30更新